相続

認知症の相続人がいる相続手続き

投稿日:2018年4月4日 更新日:

高齢化社会に伴い、相続人の中にご高齢で認知症の方がいらっしゃるケースが増えております。認知症などにより、判断能力が不十分な状態にある相続人は、遺産分割をするにあたり、成年後見制度の利用を検討することになります。この成年後見制度と遺産分割についてご説明します。

成年後見制度とは

成年後見制度は認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方々の財産管理や身上監護をする制度です。成年後見人は選任されると,初めに本人の財産や収入を把握し,医療費や税金な支出の概算をして、医療看護の計画と収支の予定を立てます。その後は、定期的に家庭裁判所へ収支報告等をする義務があります。成年後見人の仕事は、何かをすれば終わりということはなく、本人が死亡又は本人の能力が回復するまで続くのです。

成年後見人等には誰がなる?

成年後見人は、申立時に親族等を候補者とすることはできますが必ずしも選任されるとは限りません。候補がいない場合や、候補者が適切ではないと判断されると、管轄の家庭裁判所の専門職(司法書士や弁護士)の候補者リストから成年後見人が選任されます。

また、後見監督人いって後見人をさらに監督する専門職が選任されることがあります。監督人が選任されるのは、親族が後見人に就任しており財産が多額である、親族間に紛争があるというようなケースなどです。

親族が成年後見人に就任した場合は、原則報酬が発生しませんが、専門職が選任された場合は報酬が発生します。報酬は親族が払うのではなく本人の財産から支払われます。報酬付与の申立をした上で、財産額や事案によって裁判所が決めますが 成年後見人2万円~6万円、監督人は1万円~3万円がおおよその相場となります。

遺産分割のためにする成年後見申立の注意点

成年後見の申立までから選任までは時間がかかる

成年後見の申立には、医師の診断書が必要です。またわかる範囲で収支や財産一覧をまとめたり、戸籍謄本や不動産の登記事項証明書、評価証明書などの各種公的証明書の取得をするため、申立書の準備には2週間~1か月程度かかるかと思います。申立書一式の提出から成年後見人等の選任は、裁判所の混雑状況や案件により異なりますが1ヶ月~3ヶ月ほどかかります。すぐ申立をして、すぐ選任されるものではありませんので、遺産分割を急ぐ事情があるときはご留意ください。

申立先 本人の住所地の家庭裁判所
申立できる人

本人・配偶者・4親等内の親族等・市区町村長 など

必要な書類 裁判所所定の申立書一式、医師の診断書、戸籍、住民票、本人の登記されていないことの証明書 等
費用 申立手数料 800円
後見登記手数料 2600円
連絡用の切手(郵券)裁判所や類型によって異なる 4000円前後
鑑定費用(裁判所から必要とされた場合) 5万円前後

申立書や添付書類については、本人の住所地のある管轄の裁判所の案内を確認下さい。裁判所により書式等が異なります。

相続税の申告があるときは要注意!

相続税の申告がある場合は、成年後見人が相続税の申告をすることになります。相続税の申告は相続発生から10ヶ月以内に行わなくてはいけないところ、成年後見人については「選任された日から10ヶ月以内」となります。しかしながら、他の相続人については原則通り相続発生から10ヶ月以内に申告しなくてはならないため、成年後見人の選任を要するときは、相続税申告に間に合うよう速やかに手続きを進めスケジュールを組まなくてはいけません。

成年後見人が遺産分割する場合は、原則として法定相続分を確保しなくてはならない

成年後見人制度は、判断能力が不十分な方の財産を守るための制度です。このため、成年後見人等が遺産分割をする場合は勝手に放棄をしたり,不当に少ない取り分で協議に応じたりすることは許されません。原則、法定相続分を確保しなくてはなりません。

成年後見人も同じく相続人であるときは、特別代理人や後見監督人が遺産分割に参加する

成年後見人を務めている親族が成年被後見人(成年後見人がついている人)と同じく相続人同士であるときは、成年後見人と成年被後見人とが利益相反の関係となるため、成年後見人は遺産分割に参加することができず、遺産分割のために「一時的に特別に」選任される特別代理人、もしくは後見監督人が参加することになります。

成年後見制度を利用する以外の方法はあるか

判断能力が不十分とはいえ、親族のサポートにより日常の財産管理に困っていない場合は、遺産分割のためだけに、手間とお金がかかる成年後見制度の申立をすることに気が進まないという方もいらっしゃるでしょう。しかしながら相続人の方が認知症である限りは成年後見制度を利用しないで遺産分割をするという方法は存在しないのが実情です。遺産分割のためだけに一時的に代理人を選任する制度はありません。

法定相続分での相続ということであれば、不動産に関しては名義変更をすることは可能です。相続による所有権移転登記は、法定相続分での名義変更(不動産は相続人間で共有状態となります)であれば遺産分割協議書は求められません。しかしながら、預貯金等の金融機関の手続きにおいては法定相続分通りの分割でもあっても相続人全員の署名押印が求められるため、成年後見制度の利用が不可欠となります。

成年後見制度はあくまで「判断能力の不十分である人の財産を守る」制度であるため、遺産分割をすることだけを目的とすると手間や負担が多く、使い勝手の悪い制度と感じられるかもしれません。「相続財産が少ない」「相続財産は自宅のみである」など、遺産分割を急がないというケースでは、次の相続が発生するまで遺産分割を保留とするということも選択の1つとして存在します。

相続人の中に高齢の認知症の方がいらっしゃる相続手続きについてや、成年後見の申立にあたりご不安なことや、お悩みがありましたらどうぞ当事務所までお気軽にご相談下さい。

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司法書士<東京第5785号 認定第1101063号> 明治大学文学部卒業。相続や登記を専門とする渋谷区笹塚シルク司法書士事務所代表。ていねいできめ細やかな対応がお客様から支持を受けている。整理収納アドバイザー1級、家庭では2児の母。詳しいプロフィールはこちら

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