民法で定められた相続人と相続分を法定相続人と法定相続分といいます。「誰が相続人か」「相続分はどれくらいか」を導き出すには、いくつかのルールを知っている必要があります。相続人の確定と相続分を導くのに必要な、6つのポイントを図解を豊富に用いてご紹介します。
目次
1.相続には順位があり、配偶者はどの順位でも相続人となる
妻と子がいる夫が亡くなった場合、相続人は第1順位の配偶者と子が相続人です。
子のない夫婦の夫が亡くなった場合は、第1順位の子がいないため、第2順位の配偶者である妻と夫の直系尊属(親や祖父母)が相続人となります。第2順位の直系尊属もいない場合は、第三順位の配偶者である妻と夫の兄弟姉妹が相続人となります。
子のない独身の方が亡くなった場合は、配偶者と子がいないため、第2順位の直系尊属(親や祖父母)が相続人となります。第2順位の直系尊属もいない場合は、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹がいない場合は、相続人は存在しません。
2.相続発生前に、相続人である子もしくは兄弟姉妹が亡くなっている場合は代襲相続がおきる
相続人が先になくなることにより下の世代が相続人となることを代襲相続といいます。相続人の死亡のほか、民法の条文上は廃除・欠格となっている場合は代襲相続が発生しますが、相続人に廃除・欠格があることは稀なケースです。また相続放棄では代襲相続は発生しません。
妻Bと子Cがいる夫Aが亡くなったが、子Cは夫Aより先に亡くなっていて、子Cの子である孫Dがいるという場合、妻Bと、孫Dが(代襲して)相続人となります。
子のない独身Hが亡くなったが、相続人である3人の兄弟姉妹I・J・Kのうち兄Iはすでに亡くなっていて、兄Iには2人の子LとMがいるという場合。兄弟姉妹J・Kと、甥姪L・Mが(代襲して)相続人となります。
また、子の代襲相続は、子の子である孫も先に亡くなっている場合は、再代襲といってさらに下の世代のひ孫が相続人となります。ひ孫が相続人になることも、法律上はありえるのです。一方、兄弟姉妹は再代襲がありません。兄弟姉妹が亡くなっており、その下の甥姪も亡くなっているという場合はそれ以上は代襲相続がおきないのです。
3.相続発生後に、相続人が亡くなった場合は、その相続人が相続人となる
相続発生後に、相続人が亡くなった場合は、その相続人が相続権を承継します。
妻Bと子Cがいる夫Aが亡くなったが、その後に子Cも亡くなった。亡くなった子Cには相続人として妻XとCの子D(Aの孫)がいるという場合、妻Bが夫Aの相続人、子Cの妻Xと子Cの子D(Aの孫)が夫Aの相続人の相続人となります。
子のない独身Hが亡くなったが、その後に相続人である兄弟姉妹I・J・Kのうち兄Iが亡くなった。亡くなった兄Iには妻Yと2人の子LとMがいる場合、兄弟姉妹J・Kが相続人、兄Iの妻Yと兄Iの子L・M(Hの甥姪)がHの相続人の相続人となります。
4.配偶者以外の相続人は、相続分を頭割りする
各順位の法定相続分は以下の通りです。
第1順位 | 配偶者2分の1 | 直系卑属(子や孫)2分の1 |
第2順位 | 配偶者3分の2 | 直系尊属(親や祖父母)3分の1 |
第3順位 | 配偶者4分の3 | 兄弟姉妹 4分の1 |
配偶者以外の相続人は、各順位ともに複数の相続人が存在することがあります。この場合、その相続分を相続人の数で割ることになります。
夫が亡くなり、配偶者である妻と子が4人いる場合、妻の相続分は2分の1、子は法定相続分である2分の1を子の数で割ることになります。子が4人いる場合は、2分の1×4分の1=8分の1が、子1人につきの法定相続分です。
子のない夫婦の夫が亡くなった場合で、夫の両親が生きている場合は、妻の法定相続分が3分の2、夫の両親の法定相続分が3分1を両親でわることになります。3分の1×2分の1=6分の1が、夫の母と父それぞれの法定相続分となります
子のない夫婦の夫が亡くなった場合で、夫の両親は他界、兄弟姉妹が3人いる場合。妻の法定相続分が4分の3、兄弟姉妹の法定相続分が4分の1となります。4分の1×3分の1=12分の1が、兄弟姉妹の法定相続分となります
子のない独身の方が亡くなった場合で、両親は他界しており、相続人が3人の兄弟のみという場合は、相続分全体を3人でわけて、3分の1が各兄弟の相続分となります。3人のうち1人が先に亡くなっており、2人の代襲相続人がいる場合は、3分の1×2分の1=6分の1が代襲相続人の相続分となります。
5.半血兄弟の相続分は2分の1
母親や父親、いずれか一方の親が違う兄弟を半血兄弟といいます。この語に対となって、両親ともに同じ兄弟を全血兄弟といいます。半血兄弟の相続分は全血兄弟の相続分の2分の1となります。
6.養子も非嫡出子も相続分はかわらない
養子と実子の相続分は同じです。なお、養子に出た子でも、生まれた家の実親に相続が起きた場合は、生まれた家の子として他の兄弟と同様の相続分があります。
また、かつては非嫡出子(いわゆる婚外子)は嫡出子の相続分の2分の1とするという法律がありましたが、最高裁判所大法廷平成25年9月4日決定により違憲(憲法に違反されている)とされ、非嫡出子も嫡出子と同じ相続分となりました。
平成13年7月1日から平成25年9月4日(本決定の日)までの間に開始した相続について,本決定後に遺産の分割をする場合は,最高裁判所の違憲判断に従い,嫡出子と嫡出でない子の相続分は同等のものとして扱われることになります。他方,平成13年7月1日から平成25年9月4日(本決定の日)までの間に開始した相続であっても,遺産の分割の協議や裁判が終了しているなど,最高裁判所の判示する「確定的なものとなった法律関係」に当たる場合には,その効力は覆りません(法務省ホームページより)
相続人の確定や法定相続分は、これらのポイントについて確実に抑えながら戸籍を読み解いていかないといけません。また親族が多い場合や、相続が複数発生している場合は、慎重に検討・計算していかないと相続人を見落としたり、相続分を誤ってしまいます。相続人の確定や、相続分の計算にお悩みやご不安がある場合は、司法書士にご相談ください。