遺言書を発見したらどうすればよいのでしょうか?これは遺言書が自筆で記載された自筆証書遺言なのか、公証役場で作成された公正証書遺言なのかで手続きが異なります。
自筆証書遺言は封を開けずに裁判所で検認申立をする
手書きで「遺言書」とかれた封筒がでてきたら、中を開けてはいけません。
手書きで書かれた遺言書は自筆証書遺言といいます。自筆証書遺言を発見した人はすみやかに家庭裁判所に検認申立をしてください。検認申立をすることで、相続人全員へ裁判所から遺言書の検認をする旨の通知書面が届くので、見つけた人が各々の相続人に連絡をしなくても大丈夫です。
検認とは相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の偽造・変造を防ぐために、遺言書の状態等を裁判所で確認する手続きです。検認手続きを行わないと、遺言を使って銀行や法務局相続手続きをことができません。
法律では自筆証書遺言を裁判所に提出しなかったり、検認をしないで遺言を執行したり、裁判所以外で開封したものは「5万円以下の過料に処する」と定められております。もし、知らずにうっかり開封してしまった場合でも検認の申立は必ずしましょう。知らずに開封してしまった遺言書を検認時に提出して、過料を請求されたという話は聞いたことはないのでご安心ください。
なお、検認の手続きは、申立してから検認日をむかえるまでおよそ1ヶ月~2ヶ月ほどかかります。(裁判所や業務の集中状況によります)。
提出する戸籍集めるところから始めると、2ヶ月~3ヶ月ほどかかることもあり、この間遺言の内容を知ることができず相続手続きが保留状態となってしまうため、自筆証書遺言を発見したら速やかに行動に移しましょう。
<自筆証書遺言の検認申立手続きについて>
申立をする裁判所 | 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所 |
申立をする人 | 遺言書の保管者(発見者) |
申立の費用 |
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申立に必要な書類 |
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当日の持ち物 |
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公正証書遺言はまずは遺言執行者を確認
「遺言公正証書」と表紙に印字されている遺言書は公正証書遺言というものです。こちらは中を開けて確認して問題ありません。
公正証書遺言には遺言を執行する遺言執行者が記載されています。遺言執行者が、相続人ではなく弁護士や司法書士等の第三者の場合は、遺言執行者に相続が発生した旨の連絡をしましょう。公正証書遺言は裁判所での検認をする必要がありませんので、遺言執行者によりすぐに手続きを進めることができます。
公正証書遺言 原本・正本・謄本の違い
公正証書遺言には、原本・正本・謄本があります。原本は公証役場に保管されているものです。
原本の写しが正本と謄本になりますが、遺言の実行にあたっては正本または謄本があれば相続登記や相続手続きをすすめることができます。正本と謄本は遺言者と遺言執行者で、それぞれどちらかを保有していることが一般的です。
正本には「正本」と赤いスタンプが表紙や一枚目に押印されており、文中の最後に正本である旨の記載がされています。正本は力のある特別な写しであり再発行されません。謄本は遺言を作成した公証役場でのみ再発行が可能です。
複数の遺言書が出てきた場合はどうする?
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます。(民法1022条)
たとえ公正証書で遺言を残したとしても、自筆証書で新しい遺言を作成した場合は、日付が新しいものが有効となります。そして、前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなします。(民法1023条)。
日付の古い公正証書遺言には「自宅およびすべての預貯金は長女へ相続させる」とあり、日付の新しい自筆証書遺言が「自宅は長男へ相続させる」とだけあった場合は、自宅の相続に関してのみ前の遺言を撤回したことになり、「自宅は長男、預貯金は長女が相続」することになります。
公正証書の遺言検索システム
自筆証書が複数出てきたという場合は、念のため公正証書遺言の検索もしたほうがよいでしょう。最寄りの公証役場で「遺言の検索システム」が利用できます。なお、このシステムの利用には相続関係を証明する戸籍等の必要書類がありますので、公証役場に出向く前にあらかじめ問い合わせをしましょう。
なお、データベース化されているのは平成元年以降に公正証書遺言であり、平成元年以前に作成した遺言は、作成した公証役場に記録がある場合のみ照会が可能です。照会は全国どこの公証役場でもできますが、遺言の内容を確認するためには、実際に保管されている公証役場に行き公正証書遺言の謄本を請求する必要があります。
遺言書を隠したり捨ててしまうと相続人欠格となります
遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者は民法891条による相続欠格となります。相続欠格とは、相続欠格とは、相続人である権利を失うことです。民法においては、遺言について悪事を働くことは、被相続人の生命を侵害するような行為と同様に、罪が重いものとして扱われているのです。
遺言書があれば、遺言執行者や相続する人のみで手続きが可能
遺言書が残されているメリットは、他の相続人の了承や印鑑(ハンコ)をもらわなくとも手続きできることです。
ただし自筆証書遺言で遺言執行者が指定されていない場合は、遺言執行者がいなくとも手続きすることができるか、他の相続人の印鑑がいらない内容かどうか、手続き先の法務局や金融機関にまずはご確認ください。遺言執行者が必要な手続きがある場合は、裁判所に遺言執行者を選任してもらうこともできます。
遺言や遺言を用いた手続きにはいろいろなルールがあるため、遺言が残された相続手続きは相続の専門家である、司法書士におまかせ頂けるとスムーズです。また、遺言で指定された遺言執行者の代わりに、司法書士がお手続きを承ることも可能です。遺言を発見して、お手続きにご不安や気になる点がある場合はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。
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