相続についてよくわからないので専門家に相談たいのだけれども、ネットで検索しても「○○相続センター」と称した「弁護士」「司法書士」「税理士」「行政書士」がいろいろ出てきて、違いがよくわからない。では、どのみち手続きするので口座のあった銀行の「遺産整理業務」というのに依頼すればよいのか・・・?
このようなお悩みや疑問をお持ちの方へ、ここでは相続分野において、銀行を含めた各専門家(弁護士・司法書士・税理士・行政書士)が取り扱っていることやできることをご紹介します。
もめている相続は必ず弁護士
遺産をめぐって相続人同士で争いがおきている、遺留分請求が発生しているという場合はまずは弁護士にご相談下さい。遺産相続をめぐって、代理人となって他の相続人の代わりに交渉をする、ということは法律で弁護士にしか認められておりません。
弁護士は、相続についてはオールラウンドプレーヤーであり一通りのことを行うことができますが、手続きのみを依頼すると報酬が割高となるため、億単位の金融資産がある・不動産を複数所有しているなどのいわゆる富裕層でなければ、もめていない相続の相続手続や相続登記のみを弁護士に依頼するということは一般的ではありません。
相続登記があるなら司法書士
不動産をお持ちの方に人に相続が発生した場合は、遺産を相続する人に名義変更するため、法務局へ相続登記をする必要があります。司法書士はこの登記の専門家です。司法書士は法務局への登記申請のみならず、戸籍の収集・遺産分割協議書の作成まで代行することが可能です。
裁判所へ提出する書類作成も行えますので相続放棄や遺言の検認手続き、成年後見人の申立等もサポートすることができます。また、相続登記のみならず銀行や証券会社などの金融機関の相続手続きをサポートしたり、財産管理業務(遺産承継業務)として相続手続きを相続人の代わりに丸ごと代行することもできます。
つまり司法書士は不動産(土地や建物)や預貯金・株式の手続きに対応できる、相続手続きのオールラウンドプレーヤーです。
相続税申告が発生するならば税理士
税理士は税実務の専門家です。相続税や贈与税についての節税相談や、準確定申告や相続税の申告書作成をお願いしたい場合は税理士に依頼します。
相続税申告の手続きの流れの中で、税理士は遺産分割協議書の作成も行いますが、相続登記がある場合は提携の司法書士に紹介・依頼することになります。申告や相続手続きに必要となる戸籍謄本や評価証明書、銀行の残高証明書については、依頼者自身に行ってもらう税理士事務所と、取得も含めたサービスを提供するに税理士事務所とがあるのでご注意下さい。
戸籍収集や遺産分割協議書の作成だけなら行政書士
行政書士の業務は①官公署に提出する書類の作成および提出 ②権利義務・事実証明に関する書類の作成及び提出が法律で定められた主な業務です。
相続においては遺産分割協議書の作成が②にあたるため、戸籍収集や銀行の相続手続き等をふくめた相続分野に力を入れている行政書士が増えています。しかしながら①の官公署には裁判所・法務局・税務署は含まれません。このため、相続登記や金融機関の相続手続きは自分で行うが、戸籍収集や遺産分割協議書だけは専門家にお願いしたい、という場合は行政書士にご相談されるのがよいでしょう。
銀行の遺産整理業務はコーディネートするのみ
銀行へ「遺産整理業務」を依頼したとしても、銀行が担当することは主に「アドバイス」「コンサルティング」「コーディネート」であり、戸籍収集・遺産分割協議書の作成・相続登記・自行以外の金融機関の相続手続き・相続税申告等の手続きの実務はそれぞれ提携の専門家に依頼するため、銀行への報酬と別途、専門家への報酬が発生します。報酬が非常に高額のわりに、「大手銀行がコーディネートしてくれる安心を買う」という以外あまりメリットはないのでは、というのが実務に携わる専門家の印象です
弁護士、税理士、行政書士へ相続案件を依頼した場合でも、相続登記は、提携司法書士に依頼して別途報酬を支払うことになります。弁護士以外の士業や一般企業が相続登記を報酬をもらって代行することは非司法書士行為となるからです。
このため、「不動産があり」「もめていない」相続についてはまずは司法書士にご相談されることをおすすめします。
当事務所にご相談・ご依頼いただいたお客様において、相続税の申告がある場合や、税金のご心配やお悩みがある場合は、相続や不動産に強い税理士をご紹介させて頂きます。その他必要に応じて、弁護士・行政書士・社会労務士などをご紹介することも可能です。相続が発生した場合は、まず司法書士、そして当事務所にご相談ください。
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