父の遺産にバブルの時に買った売れない土地があります
先日亡くなった父の遺産の中に、父がバブルの時に買ったT県の別荘用地があることが判明しました。母の話によると、父が生前に売却をこころみて地元の不動産屋さんに相談したところ「買う人がいなく値段がつかない」と言われ、あきらめてそのままになっていたようです。このような売れない土地はどうすればよいのでしょうか?
「いらない土地だけを放棄できる」制度は現在ありません。
バブルの時は本当に多くのサラリーマンや公務員の方が投資用不動産を購入していたのだな、と実感するほどこのようなご相談は多くいただきます。しかしながら、現行の法律では「不動産の所有権を放棄できる」制度はないので、どなたが相続をして管理することになる、というのがお答えになってしまいます。
遺産が少なく借金が多いということであれば相続放棄も視野に入りますが、生前に別荘用地をご購入されるような方であれば遺産に自宅不動産や貯金があると思われますので、プラスの財産も放棄する必要のある相続放棄は現実的ではないでしょう。また、相続放棄をしても、次の相続人や相続財産管理人が決まるまでは管理を継続しなくてはいけないとする民法の定めがあり、実際に管理義務を自治体などから求められるケースもあるため、売れない土地を完全に手放すことができるとはいえません。
このため、たとえ売れない土地でありいらない遺産であっても相続せざるを得ないというのが実情です。
まずは地元の不動産業者や地方自治体の役所に需要の確認を
しかしながら数年前は価値がなくとも、地方移住ブームなどで数年前より需要があがってきている地域もありますので、本当に売れないのか、まずは電話やネットでの問い合わせに対応をしている地元の不動産業者などに問合せをしてみるのがよいでしょう。
実際に売れないのであれば「あげるか寄付をする」ということを検討したいところですが、価値のない不動産というのは国や市区町村においても寄付を受け付けてくれません。一方でUターンや移住誘致に成功している市区町村では、空き家や空き土地の活用にも積極的で、マッチングに成功しているケースもあります。対象の市区町村に空き家・空き土地の対策をしている担当部署があるようなら、相談をしてみるのは一つの手だと思います。
なお、最近ではこのような「負動産」に目を付けて、「あなたの持っている不動産を買いたい」とアプローチをしてきて、不当な費用を請求されたり、新たな土地を購入させられてしまう悪徳商法トラブルが増えていますので、どうぞお気をつけください。
より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル-原野や山林などの買い取り話には耳を貸さない!契約しない!-(国民生活センター)
相続登記の義務化とあわせ相続した所有権の放棄制度も検討されています
現在国は所有者不明土地問題の解決のため、相続登記の義務化とあわせ、一定の条件がそろえば「相続した土地の所有権放棄できる」制度についても検討しており、法改正をするとしています。このため、まずは相続関係を複雑化させないためにも、相続登記は早めに行うことをおすすめします。
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