生前につきあいのなかった親族が亡くなってしまったとき、他の相続人が相続財産の内容を教えてくれないとき、亡くなった方の遺産はどのようにして調べればよいのでしょうか?相続財産の調べ方をご説明します。
目次
自宅にある書類等を確認
まずはお住まいだった自宅を中心に、下記の書類や手がかりを探しましょう。
預貯金を調べる手がかりとなるもの
- キャッシュカード
- 通帳
- 銀行からの郵送物
- 粗品(カレンダーやメモ帳など)
取引をしている銀行さえわかれば、各地の支店に口座があるかどうか照会をかけることができます
不動産を調べる手がかりとなるもの
- 権利証(登記識別情報)
- 登記事項証明書
- 売買契約書
- 固定資産税納税通知書(市区町村から毎年4月~6月頃に自宅へ郵送で届きます。)
権利証(登記識別情報)・登記事項証明書・売買契約書は3点セットで購入時のまま保管されていることが多いです。
有価証券(株式・債券・投資信託)を調べる手がかりとなるもの
- 信託銀行や証券会社の取引残高報告書
- 株主名簿管理人である信託銀行発行の配当金
- 株券(2009年より上場会社株式の株券制度は廃止されており、株券は電子化されています。)
取引残高報告書や配当金領収書は、毎年定期的に登録先住所に郵送されます。
保険を調べる手がかりとなるもの
- 保険証書
- 契約確認や生命保険料控除証明書等の郵送物
- 粗品(カレンダーやメモ帳など)
加入している保険会社さえわかれば、どのような保険に入っているか保険会社に照会をかけることができます。
借金(負債)を調べる手がかりとなるもの
- 契約書・金銭消費貸借書
- カード会社の支払明細書
- 消費者金融のカード(財布の中に入っていることが多いです)
- 税金の催促状
- 登記事項証明書(抵当権の有無で住宅ローン等の不動産担保の確認する)
銀行・消費者金融・信販会社・クレジットカード会社は取引している銀行や会社さえわかれば、借金の残高等の照会をかけることができます
貸金庫に注意!
貸金庫を契約している場合は、不動産の権利証や株券等、重要な書類が保管されていることがあります。しかしながら、貸金庫を開けるのには相続人全員の同意と戸籍および印鑑証明書の提出が求められますので、相続調査の早い段階で手続きを進めることをおすすめします。
自宅で資料を確認できない場合、残高が不明の場合は関係先に照会をかける
自宅から出てこなかった、他の相続人の管理下にあるので自宅を確認できない、という場合は関係先に照会をかけましょう。また、取引先金融機関はわかったが、何をどれだけ預けているかわからないという場合は、残高証明書を請求することによって財産の詳細を知ることができます。
照会(請求)に必要とされるもの
- 亡くなった方の死亡の記載がある戸籍謄本
- 照会(請求)者が相続人であるとわかる戸籍謄本
- 照会(請求)者の身分証明書
※金融機関の残高証明書の請求には、請求者の印鑑証明書が必要となります。
所有不動産の確認
発行される書類 | 名寄帳 |
照会先 |
自治体(市区町村)の固定資産税課 ※東京23区は都税事務所 |
各自治体(市区町村)は名寄帳といって、固定資産税を徴収するため、その人が所有する不動産の一覧表を持っています。この名寄帳を請求することで自治体ごとではありますが、所有する不動産がわかるわけです。日本全国のどこに不動産を持っているか、ということを照会する仕組みは残念ながら存在しないため、どこの自治体に不動産があるかわからないという場合は、自宅のある自治体や実家のある自治体などあたりをつけて請求することになります。
預貯金・有価証券(株式・債券・有価証券)の残高証明書
発行される書類 | 残高証明書 |
照会先 | 各金融機関(銀行・信用金庫・信託銀行・証券会社) |
金融機関や証券会社では「残高証明書」という、ある日時点でその人がその金融機関預けている資産の一覧表を発行してくれます。証券会社の残高証明書はたいてい無料ですが、銀行や信用金庫、信託銀行等は有料で金融機関により手数料も異なります。
残高証明書を請求する日付は相続発生日(亡くなった日)にしておくと、相続税申告がある場合の添付書面として利用できます。不動産と同様に、日本全国のどこの金融機関に預けているか、ということを照会する仕組みは存在しないため、取引先の金融機関がわからない場合は、自宅近くにある金融機関、家にある粗品(カレンダー等)を手掛かりに照会をかけましょう。
なお、年配のかたはゆうちょ銀行に口座をお持ちの方が多いので郵便局で照会をかけることをおすすめします。ゆうちょ銀行では、口座があるかないかを確認する「現存照会請求」という制度があります。
上場株式ついて
上場株式については電子化された株券を管理する証券振替機構(ほふり)に対し、上場株式等に係る口座が開設されている証券会社、信託銀行等の照会(登録済加入者情報の開示請求)をすることができます。
保険の照会
保険は弁護士であれば保険協会に対して弁護士法23条の2に基づく照会を行うことができるため、弁護士へ遺産分割事件等の依頼が前提であれば、かつては「亡くなった人がどこの会社の保険に入っているか」ということが保険協会経由で確認することができました。ところが平成29年5月に生命保険協会の一括照会の制度が終了したため、現在は個別で保険会社に問い合わせをする必要があります。
借金(負債)の照会(信用情報の開示請求)
発行される書類 | 信用情報 |
照会先 |
信用情報機関 |
信用情報機関とは、個人の信用情報を収集・管理し、加盟会社からの照会に応じて情報提供を行なう機関です。相続人からも開示請求を行なうことができ、亡くなった方(被相続人)の借入先や返済状況などを知ることができます。
信用情報機関は3つあります。クレジットカード会社や消費者金融の情報はJICCかCIC、銀行系金融機関の情報はKSCに登録されているので、3つすべて信用情報を請求したほうが確実でしょう。取引している会社や銀行がわかったら、各社に連絡をして(借金の)残高証明書を発行してもらいます。
発行される書類 | 残高証明書・取引履歴 等 |
照会先 | 消費者金融会社・クレジットカード会社・銀行等 |
銀行(通帳)の出入金履歴でお金の動きを調べる
通帳の入金や出金から、以下のようなこと確認することができます。通帳がない場合は、銀行に「取引履歴」を請求することができます。
- 固定資産税の引き落とし(不動産を所有している自治体)
- 保険料の引き落とし(保険加入先)
- 返済(借金の借入先)
- 貸金庫の利用料(貸金庫の有無)
- 投資信託や株式の配当(所有してる金融商品)
取引履歴の請求は、データ引き出しの事務作業が煩雑なためか、窓口で相談すると難しい顔をされることもあり、時には「対応できない」というよう態度をとられることがありますが、判例により権利として認められているものなので、相続人であれば必ず請求できます。
【平成21年1月22日最高裁判決】 預金者の共同相続人の一人は,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる。
開示される取引履歴の期間は金融機関の保管状況によって異なりますが、5年前後を目安に請求するのがよいかと思います。なお、取引履歴は有料のところがほとんどであり、中には「1か月につき○百円」としているところもあるため、金額を確認せず、できる限り長い期間を請求してしまうと手数料が予想外に高額になることがありますのでご注意ください。
「遺産がわからない!亡くなった人の相続財産を調べる方法」のまとめいかがでしたでしょうか?相続財産調査は専門家に頼めば魔法のようにわかるものということはなく、専門家であってもひとつひとつ地道にあたることが求められます。相続財産調査についてわからないことやご相談がありましたら下記のフォームからお気軽にお問合せ下さい。
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