遺産相続するにあたっては、「調査→話し合い(遺産分割協議)→各種手続き」というのがおおまかな流れになりますが、相続放棄や相続税の申告な守らなくてはいけないど期限が定められている手続きもあるのでご注意下さい。
1.相続人・遺産・遺言書の調査
相続人調査(戸籍の収集)
相続人は誰なのか、戸籍を収集して相続人を確定します。相続人を調べるには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどって取得していきます。戸籍は本籍地のある市区町村の役所で取得でき、郵送でも請求することができます。戸籍の数が多かったり、相続関係が複雑だと、戸籍の収集に1ヶ月以上かかることもありますので手続き全体を急ぐ場合はご留意ください。
参考記事相続財産調査(財産および債務の確認)
預貯金、株式・不動産・債務などを確認します。銀行など金融機関に対しては、相続が発生したことを連絡して相続届などの書類を入手します。なお、この連絡をすると口座は凍結され預貯金は入出金ができなくなりますのでご注意下さい。預貯金や有価証券は残高証明書を請求することによって預けている資産がわかります。必要に応じて、相続財産が一覧でわかる財産目録を作成します。相続財産の全容がわかったら、全財産を確認して相続税の申告の有無を確認します。
参考記事遺言書の確認
遺言書が残されている場合は、遺言書の通りに手続きをする必要があります。自筆証書遺言は自宅で保管されていることがほとんどですが、銀行の貸金庫に預けられていたり、作成サポートを依頼した弁護士や司法書士などの専門家が保管しているケースもあります。自筆証書遺言を発見したら、遺言の検認手続きをします。公正証書遺言を残しているかどうかは、最寄の公証役場で遺言書の検索をすることが可能です。
参考記事2.相続承認・相続放棄の検討 3ヶ月以内
相続承認とは相続をするということです。一方、相続放棄とは相続しないということです。借金がプラスの財産より多い場合などは、家庭裁判所に申出をすることで「相続人ではなくなる」効果をもたらす相続放棄申述手続きを検討します。相続放棄が家庭裁判所認められ相続人ではなくなると、亡くなった方に借金や滞納した税金や費用を支払わなくてよくなります。裁判所へする相続放棄は、相続発生を知ってから3カ月以内に行わなくてはいけません。
参考記事準確定申告【生前に確定申告をしていた場合のみ】4ヶ月以内
事業収入や不動産収入などがあり、生前に確定申告をしていた方が亡くなった場合は、相続人が、1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、申告と納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます。準確定申告は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。
3.遺産分割協議
相続人と財産が確定したら、誰が何をどれだけ相続するか話し合う遺産分割協議をします。協議が整ったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員で実印にて押印します。なお、遺言が残されていた場合は、原則は遺言どおりに分割します。
参考記事4.相続登記や金融機関の相続手続き
預貯金や有価証券の相続手続き
銀行や証券会社に相続届や戸籍などの必要書類を提出して相続手続きをします。相続届には原則相続人全員の実印での押印が必要となります。遺言や遺産分割協議書を添付すれば、一部の相続人のみで手続きできることもあります。なお、預貯金は払い戻しを選ぶことが多いですが、株式は名義変更となります。株式を現金化したい場合は、名義変更後に売却することになります。
参考記事相続登記(不動産の名義変更)
亡くなった方が残された財産に不動産がある場合、相続する人へ名義変更をするには、法務局への申請が必要となります。申請は、不動産を管轄する法務局に行います。添付書面は戸籍謄本など相続関係を証明する書類のほかに、亡くなった方が遺言を残されている場合は遺言書原本の添付が、遺言がない場合は遺産分割協議書の原本および印鑑証明書の添付が必要となります。
参考記事生命保険の受取
生命保険は受取人に指定されている方が、単独で手続きをすることができます。生命保険は受け取る個人特有の財産となり相続財産には含まれません。しかしながら、一定の額を超えると相続税申告の対象となります。
自動車の相続手続き
車の相続は、管轄の陸運局へ名義変更の申請をします。車の相続手続きにおいても、戸籍や遺産分割協議書を添付します。車を廃棄したい場合や相続人以外の人に譲りたい場合も原則、相続人への名義変更する必要があります。
5.相続税申告 10ヶ月以内
相続税は、個人が亡くなった人から相続などによって財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税金です。相続税の申告をする必要がある場合には、被相続人が亡くなった日の翌日から10 か月以内に、被相続人の住所地を所轄する税務署に相続税の申告書を提出するとともに、納税しなければなりません。申告書の提出期限に遅れて申告と納税をした場合には、原則として加算税及び延滞税がかかります。
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