遺言

自筆証書遺言のリスク

投稿日:2017年9月28日 更新日:

遺言書が実現されないことがある!?

自分ひとりで、ペンと紙さえあれば作成できる自筆証書遺言。公正証書遺言とくらべて、お金がかからず手軽といっても、遺言内容を検討したり、書き方を調べたり、道具を用意したり、すべての文字を自筆でかいたりと、いろいろな工夫と苦労がつまっているものです。

自分が少なからぬ苦労して作成した遺言書であれば遺族は気持ちをくみとって、遺言どおりにしてくれるだろうと相続人を信じたいところですが、実際にはそういかないこともあります。ここで、自筆証書遺言にひそむ「遺言が実現されない」4つのリスクを説明します。

1.遺言書が発見されない

自筆遺言は他の遺言方式と異なり、作成にあたり関係者がいません。このため、あらかじめ「自分は遺言書を残しており○○に保管してある」と伝えておかないと誰にも発見されない可能性もあります。伝えた相手が、病気のため忘れてしまったり、亡くなってしまったりする場合も同様です。

また遺言書を書き換えた場合、古いものは処分・新しいものを保管ということを徹底しないと、古い遺言書だけが発見されて、最新の遺言書が発見されないということもありえます。

2、遺言書が隠されてしまう

第一発見者が遺言書を隠してしまうと、その遺言は当然ながら実現される機会を失います。隠されてしまった自筆証書遺言は世の中でどれだけあるのだろうか、というのはまさに死者と隠した人と神のみぞ知るところなので、どれくらいの数があるのか把握することはできません。

一方、開封されてしまう遺言書については実際に目にする機会があります。自筆証書遺言についていくらかお調べになった方であれば、遺言書は封をしてあるし、法律で検認するまでは開けてはいけないとされているし、さらに封筒に裁判所に提出するように記載すれば遺言書が開封されるということはないのでは、と思われるかもしれません。しかしながら相続にたずさわる仕事をしていると、少なくない数の検認される前に開封された遺言書に遭遇します。「内容はだいたい知っていたから」「どうしても気になったから」「開けてはいけないと知らなかったから」と事情は様々です。

開けられてしまう遺言書もあるのだから、隠されり見なかったことにされてしまう遺言書も少なくはないのだろうな、というのが相続の実務を通して思うところです。

3、遺言書があるにもかかわらず遺産分割協議が行われてしまう

自筆証書遺言においては、遺言を実行する遺言執行者が指定されていないことが少なくありません。

遺言執行者が指定されていない場合はストップをかける存在がいないので、遺言書とは異なる内容の遺産分割協議が行われてしまうこともあります。

※相続人に相続させる内容の遺言は、法的な見解では相続発生後と同時に効力が発生するため、相続人による遺産分割協議はできないとされていますが、一方で相続人の全員の同意があれば遺言内容と異なる遺産分割協議も有効とする判例(さいたま地方裁判所平成14年2月7日判決等)もあります。

4、「本人の意思でかいたか」トラブルに発展しやすい

平均寿命が高齢化するなか、年々増加している認知症。これに伴い「認知症を発生してから書かれた遺言だから、この遺言書は無効ではないか」という点を争うケースが増えています。認知症は発生した日を特定することが難しく、たいていは症状がある程度進行してから認知症とわかるものです。認知症を発生したと思われる前後で書かれた自筆証書遺言は、本人の正常な状態の意思でかいたものなのか、真実は亡くなった本人しかわかりません。

認知症のみならず高齢による判断能力の低下ということもあります。遺言の内容は本心ではないが、日頃面倒をみてもらっている長女にいわれたのでやむなくいわれたとおりに遺言書を書いた、このことを次女は母の友人から聞いたが証拠はない、というようなケースもあるでしょう。

一人で完結できてしまう自筆遺言は、意志(本心)を確認する第三者が存在しないので、トラブルを生じやすいのです。

自筆証書遺言のリスクを回避する方法

このように、かつてはリスクのあった自筆証書遺言ですが、令和2年7月より法務局で自筆証書遺言保管制度が開始しました。この制度を利用することにより、1・2のリスクは回避することが出来ます。

また、3を避けるために、遺言書で遺言執行者の指定をしましょう。遺言執行者とは遺言を実行する人です。遺言執行者は、未成年と破産者以外は誰でもなることができるので、遺言で相続財産をもらう相続人や受遺者を指定することもできますし、司法書士や弁護士といった専門家を指定することもできます。なお専門家を指定する場合は、遺言執行後に報酬が発生します(相場は相続財産の0.5%~2%程度)。相続手続きの難易度等に応じて、遺言執行者を誰とするかはご検討ください。

また、遺言執行者を指定しても4のリスクは排除できません。4の対策としては公正証書遺言で作成することです。高齢の方の遺言作成はやはり、自筆証書ではなく公正証書遺言での作成をおすすめします。公正証書遺言作成では、最後の確認・承認の際は、相続関係者は同席しないため、単独で本人の意思を確認することができます。

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司法書士<東京第5785号 認定第1101063号> 明治大学文学部卒業。相続や登記を専門とする渋谷区笹塚シルク司法書士事務所代表。ていねいできめ細やかな対応がお客様から支持を受けている。整理収納アドバイザー1級、家庭では2児の母。詳しいプロフィールはこちら

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