司法書士に遺言作成を依頼するメリット
遺言を検討されている方のほとんどが、財産の中に不動産をお持ちかと思いますが、不動産のある遺言作成の場合、相続発生後の相続登記や金融機関等の相続手続きを依頼できるのが、遺言作成サポートを弁護士や行政書士ではなく司法書士に依頼する大きなメリットです。
遺言を作成するにあたり、司法書士に依頼を検討している方。どのような司法書士に依頼すればよいかお悩みではありませんか?遺言作成は、相続登記のように「名義変更がおわったらおわり」ではなく、数年、数十年先の相続発生時にもつながる依頼です。このため、遺言作成は以下の3つの条件を満たす司法書士を依頼することをおすすめします。
相続・遺言に強い司法書士
知り合いの司法書士や家を購入した時にお世話になって司法書士に相談してみようかな、と思った方。ちょっとお待ちください。その司法書士は相続・遺言に強い司法書士でしょうか?
司法書士に仕事は不動産・会社関係・債務整理・裁判関連と多岐にわたるため、それぞれに得意不得意があります。
この道何十年、経験豊富なベテラン司法書士ならばどの分野もひととおり経験しており、遺言作成の経験も当然あるものですが、経験が浅い司法書士や、専門性の高い大手の司法書士事務所に所属している勤務司法書士の場合、「遺言作成のサポートをしたことがない」という司法書士もいるものなのです。(先日、司法書士会の研修で遺言作成の経験の有無を挙手する機会があったのですが、思ったよりも経験がない方が多いのだなという印象でした。)
遺言作成は、将来のことをみすえて丁寧な配慮が求められる繊細な業務です。後で後悔がないよう、相続・遺言分野に精通した司法書士に依頼しましょう。
地元密着型の開業司法書士
公正証書で遺言を作成する場合、作成(依頼)をする公証役場は、全国どこの公証役場でもかまいません。依頼される方としては、ご自身のお住まいやご職場の近くの公証役場のほうがご都合がよいかと思います。一方、依頼をうける司法書士は、事務所の最寄りの、なじみの公証役場をおすめしたいところです。公証人もいろいろなタイプの方がいらっしゃるので、普段付き合いのある公証人とやり取りするほうが業務がスムーズだからです。
公正証書遺言の作成サポートを司法書士に依頼した場合、作成日当日は証人として司法書士が立ち会うことになるでしょう。司法書士が遺言執行者であり証人にはならない場合は、付き添いというかたちになるかと思います。このとき、司法書士の事務所からお客様のご希望する公証役場が離れている場合、司法書士の日当や交通費が発生して費用が高くついてしまいます。また、司法書士事務所の最寄りの公証役場が遠い場合は、お客様に負担がかかってしまいます。
さらに、なぜ地元密着型の「開業」司法書士かというと、継続して同じ地域で営業をしている可能性が高いからです。遺言は作成をしたらおしまいではありません。依頼者の相続発生後に、次は相続人が司法書士に名義変更や銀行手続きを依頼したいといことがよくあります。遺言の内容に疑問を持ち、作成当時の状況を確認したいというかもしれません。このとき、同じ地域で引き続き営業していればスムーズなやりとりができます。
ところが、勤務司法書士や大手事務所の司法書士の場合、数十年後も同じ事務所や同じエリアにいる可能性は低いといえます。司法書士を探すことは司法書士会の検索から容易にできますが、遠方にいる場合は手間とお金がかかってしまいます。
司法書士に依頼することによる、スムーズな遺言実行のメリットを相続人が享受できるために、遺言作成は地元密着型の司法書士をおすすめします。
依頼者よりも若く健康な司法書士
上記からつながることですが、せっかく地元密着型の司法書士に依頼しても、依頼者より早く司法書士に相続が発生、つまり依頼者より司法書士が先に亡くなっては意味がありません。
司法書士のような専門職というと「年配のベテラン」のほうが、依頼するにあたりよいのではと思われるかもしれませんが、遺言案件に関してはことさら年齢が重要です。特に司法書士に遺言執行者を依頼する場合、遺言執行者が依頼者より先に亡くなってしまうと、家庭裁判所に再度別の専門家の選任をお願いする必要があります。
このように、遺言のスムーズな実行を考えると、遺言作成は「相続・遺言に強い」「依頼者より若い」「地域密着型の開業司法書士」に依頼するのがベストでしょう。
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