相続放棄の3ヶ月はいつからはじまる?
相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから」3ヶ月以内に行う必要があります。
この3ヶ月を法律用語では「熟慮期間」とよび、3ヶ月以内に、相続をするか、相続放棄をするか決めなさいということなのです。相続をすると決めた場合、「私は相続します」とどこかに宣言する必要はありません。しかし、相続放棄をする場合は家庭裁判所に書類を提出して、相続放棄を裁判所に認めてもらう(審判を下してもらう)必要があります。この裁判所を通しての相続放棄を「相続放棄申述」といいます。
では「自己のために相続の開始があったことを知ったときから」いつから始まるのか、具体例を説明します。
- 臨終に立ち会っている。亡くなった日に連絡がきた。→相続発生日(亡くなった日)
- 亡くなったことを後日に親族などの連絡で知った。→親族から連絡がきた日
- 亡くなったことを業者や役所からの書面(手紙)で知った。→書面が届いた日
- 前順位の相続人が相続放棄をしたことにより、相続人になったことを知った→前順位の相続人が相続放棄をしたことを知った日
連絡がきた日を正確に思い出せない場合は?
メールやLINE、電話などで連絡がきた場合は履歴を確認します。電話の場合で自分に履歴がない場合は、お知らせをしてくれた相手方にも確認しましょう。何かヒントがあるはすです。手紙で知った場合で、届いた日や開封した日を忘れてしまった場合は、封筒の消印の1~2日後(発送場所から自宅までの平均的な郵送日数)として、必要に応じて封筒の写しも裁判所に提出しましょう。
相続放棄の期限までに何をすればよいのか?
相続放棄の3ヶ月の期限とは、いったい期限までに何をすればよいのでしょうか?それは「相続放棄申述書」を裁判所に提出することです。3ヶ月以内に相続放棄が受理されていることや、債権者などに通知しなくてはいけないということではありません。
熟慮期間の具体例
- 相続発生を知った日 1月1日
- 熟慮期間の起算日 1月2日
- 3ヶ月の期限 3月1日の終了時まで
相続放棄申述書には相続関係を証明する戸籍謄本を添付します。戸籍謄本は本籍地のある役所でしか取得することができないため、本籍地が遠方である場合は、思い立ったその日に相続放棄申述書の提出をすることは難しいです。
また、亡くなった人と相続人の関係が兄弟姉妹や甥姪である場合は、相続関係を証明するためにより多くの戸籍謄本を収集する必要があります。このため期限の1ヶ月前には放棄をするか決めて、手続きの準備にとりかかりましょう。
数年経過してから債権者や役所からの手紙で死亡を知った場合
疎遠にしていた親や兄弟姉妹などが死亡したことを、数カ月や数年経過した後に、役所からの納税催促や金融機関・カード会社・消費者金融からの支払催促で知った場合、果たして本当に自分は相続放棄できるのか大変気になるかと思います。催促の文書の中に死亡日が記載されていることもありますが、記載されていない場合は、果たしていつ亡くなったのかもわかりません。
そのようなケースでも、熟慮期間の起算点は「書面が届いた日」です。書面が届いた日から3ヶ月以内に手続きすれば大丈夫ですのでご安心下さい。
ただし、裁判所の考え方としては相続放棄をするのであれば「相続が発生した日から3ヶ月以内におこなう」ことが原則であるため、相続発生日から3ヶ月を経過している場合の相続放棄は、裁判所はより慎重に検討や確認を行う傾向があります。このようなケースにおいては、送られてきた書面の写しと「なぜ死亡したことを知らなかった」のかという内容を説明した上申書を、相続放棄申述書に添付することで、スムーズに裁判所の理解を得られることができます。
相続放棄の期限が延長ができる~相続の承認又は放棄の期間の伸長~
「相続の承認または放棄の期間の伸長」という制度があります。これは、不明な財産や債務などが多かったり権利関係が複雑である等で、3ヶ月以内では相続するかどうかを決められないような特殊な事情がある場合に、伸長の申立をすることによって3ヶ月の熟慮期間さらに3ヶ月伸ばすことができる制度です。
念のためだしておこうというような気軽に利用できるようなものではなく、相続放棄申述と同様の添付書面と流れを求めらえる手続きです。伸長には相当の理由が必要であり、申立をすれば必ずも認められるというものではありません。「気づくのが遅くて手続きが間に合わない!」という理由では認められるものではありません。また、よほどの理由がない限りは3ヶ月超えの伸長や、再伸長は認められない傾向にあるようです。
相続放棄は司法書士にご依頼頂ければスムーズで確実です
他の法的な手続きと異なり、相続放棄は「3ヶ月」という明確で厳格な期限があるため、緊張感が続く手続です。また、3ヶ月以内に書類を提出した後も、裁判所から照会がきたりと、相続受理証明書が無事手元に届くまでは安心することができません。相続放棄の手続き完了後、裁判所がその後について相談にのってくれるということはありませんので、債権者や次の相続人への連絡などがある場合は、また調べたり気になったりという日々が続きます。
上記のような緊張を落ち着かせることができ、手続きのこと以外でも、対応についてわからないことはすぐ聞ける、という安心を得られるというのが相続放棄を司法書士に依頼する大きなメリットかと思います。相続放棄についてご不安がある場合は、どうぞ相続放棄手続の経験豊富な、シルク司法書士事務所にご相談・ご依頼ください。
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