「会社登記ってどんな人が司法書士に依頼しているの?」
先日、司法書士としてはなかなか衝撃的なおことばを、社長さんから頂いてしましました。
昨今、インターネット上の情報やサービスを利用して会社登記をご自身や自社で行う方が増えています。なのに、お金を払って司法書士に、(がんばれば自分でできる)会社登記を依頼するメリットとは?
それは、1つに「近い将来に損をしたり、トラブルを防ぐための、適切な情報提供をうけられる」ということがあります。
例えば先日の会社設立のご相談。ヒアリングシートを確認して気になった点が2つほどありました。
1つは「会社所在地が自宅マンション」であること。
マンションの場合は、規約や契約で「事業のために利用することを禁止」していることが多いからです。破ってしまうと、最悪追い出されてしまうことも。お聞きすると、契約書に禁止する記載があった気がするとのこと。
では本店所在地を取り急ぎ実家するのはどうか。相談者は、インターネット関連のサービスを展開する予定です。特定商取引法にかかるビジネスをする場合は、webサイトに「登記上の本店所在地」を掲載する必要があります。ご実家の住所が広くインターネットの世界に広まってしまうことは、あまりよいことではないでしょう。
このような状況でよく検討されるのが「シェアオフィス」「バーチャルオフィス」。しかし、これらを本店所在地とすると銀行の法人口座開設がスムーズにいかない場合があるので、慎重に運営会社を選ぶ必要があります。
設立した後に「やっぱり所在地をかえたい!」とすると、同じ渋谷区内であれば登録免許税だけで3万円、渋谷区外だと6万円もかかります。23区は、おおよそ区ごとに登記の管轄がわかれているため、区をまたぐ本店移転(所在地変更)が割高です。
2つ目の気になった点は「事業目的」
メインの事業目的が「インターネット関連ビジネス」のような漠然とした内容となっていました。このような書き方でも登記は通ります。聞くと、カバーする範囲がひろい文言がよかったと。
しかし、今の時代「インターネット」と記載するだけでは、どんなことをやっている会社なのか、第三者に理解してもらえません。融資や補助金を打診する際などに、事業目的変更が必要になってしまうかも。
相談者には、すでに個人事業主として展開を進めているビジネスがありましたので、メインの事業は具体的に記載して、インターネット関連についても、販売やコンサルティング等、もう少し情報を加えてみてはとアドバイスをしました。
事業目的も、1つ加えたり、変更したりするだけで3万円登録免許税がかかるからです。
これらの情報は、すべてインターネット上でも拾えるものです。しかしながら、これらの情報を短期間で獲得して整理するには、それなりの時間と労力が必要でしょう。
さらに司法書士に登記を依頼して節約できるのは時間だけではなく、将来的なコストでもあったりします。
先日の「株式を分割したい」というご依頼
謄本を確認すると、事業目的が1つだけ。クライアントのWEBサイトをみるに、明らかに他の事業もおこなっています。そこで「株式分割とあわせて事業目的を追加してはいかがでしょうか?」という提案をしました。
なぜなら、株式分割だけ行っても、事業目的の変更を追加しても、登録免許税は同じ3万円だからです。これが、数か月後に事業目的の変更だけを申請すると、別途3万円かかってしまいます。
登記と登録免許税の仕組みを理解している、司法書士だから気づけるポイントです。
こんな感じで、会社登記をせっかく司法書士に依頼してくれた場合には、相手が得するようなおせっかいアドバイスを積極的に行うようにしております。
また、設立時から定款を見直されていない会社さんは、登記を司法書士に依頼することで、これを機に現状にマッチする定款に更新することもできます。
設立時は自分で行った、司法書士以外の士業にまかせた、という社長さん!次の会社登記はためしに司法書士に(できれば当事務所に)依頼してみてはいかがでしょうか?
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