ここ最近、親族間売買のご依頼が続いております。
親族間でわざわざ売買ってどんな事情?と思われる方もいるかもしれません。よくあるパターンとしては「自宅や実家の共有持分をほかの親族から買い取りたい」というもの。相続した時や購入した時に共有にしたけれど、やはり名義をまとめておきたいというニーズです。「借金があるので買い取ることで助けてあげたい」という債務がらみのこともあります。税理士さんからアドバイスをうけた相続対策ということもあるでしょう。
親族間売買で気を付けてはいけないのは「売買価格」。身内だからといって市場価格よりはるかに安い売買価格にしてしまうと、その安くしている部分を税務署から「贈与」とみなされ贈与税が課税されてしまいます。このため売主が特にお金に困ってないとしても適正価格で売買しなくてはいけません。また親族間の売買であっても、買主には不動産取得税、売主には譲渡所得税の申告および納付義務があるということもお忘れなく。
司法書士が売主や買主から直接依頼をうける親族間売買の特徴は不動産屋さんが入っていないことです。不動産取引において、不動産屋さんが入る大きなメリットは、取引の相手を整えてくれることと、重要事項説明書が作成されること。
宅地建物取引士しか取り扱うことができない重要事項説明書が作成・説明・確認されることで、不動産取引に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
取引の専門家は不動産屋さん(宅地建物取引業者)、法務局に申請する名義変更の専門家が司法書士。
取引相手が決まっており、買主が売主と同レベルで物件のことを知っている、事情を共有しているのでトラブルの可能性がほぼない、という親族間売買の場合は、取引の専門家がいらないということで、名義変更の専門家のみに依頼するということがあるわけです。
取引相手が決まっているので不動産屋にはお金を払いたくないが、トラブルは回避できるよう売買契約書はしっかり作成してほしい、そして何かあるときは仲裁してほしい責任をとってほしい、というような目的で司法書士に依頼したいという場合は当事務所ではお受けしておりません。親族間であっても、買主が物件の事をよく知らなかったり、境界や設備のことなどでトラブルの予見がある場合は、きちんと取引の専門家である不動産屋さんを入れて重要事項説明書を作成してもらうことをおすすめします。
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