みなさんは遺言を書いていますか?
いわゆる現役世代のであれば「それなりの財産があれば残すけど・・・まだ先の話では・・・」という方がほとんどではないでしょうか。
でも私はそれなりの財産もないし、40代だけど心だけは若いつもりですが、手書きの遺言を書いて法務局に保管してあります。
それは「万が一、子供が未成年のうちに自分が死んでしまうと、銀行の手続きなどをするために裁判所のお世話にならなくてはいけない」ということを知っているからです。
相続登記や預金の相続手続きをする場合は、原則、遺産分割協議書などに相続人全員のハンコを押す必要があります。
しかしながら未成年の相続人は、遺産分割協議書などにハンコが押せません。ケータイを買うときと同じで、未成年は「法定代理人」である親がハンコを押すのです。
夫が亡くなり、相続人は妻と子の2人というケースで説明します
子の法定代理人はもちろん子の親である妻です。
遺産分割協議というのは「誰がどれだけ相続するか」を決める話し合いです。
ところが、話し合いにあたって、妻は「自分と子の法定代理人という1人2役」を兼ねることはできません。
なぜなら、法律の考え方では妻と子はライバル同士だから。つまり、妻も相続人である場合は、子の法定代理人としてハンコを押せないのです。
このようなとき、裁判所に「親と子がライバルなので、遺産分割協議をするときのためだけに特別に、子の代理人を選んでください」という申立てをしなくてはいけませんこれを特別代理人といいます。特別代理人はたいてい、相続人ではない親族に報酬なしでお願いするケースが多いです。身近に候補者がない場合は、司法書士や弁護士などに報酬を払ってで依頼することに。
子どもが複数いる場合は、子どもごとに特別代理人を用意しなくてはなりません。
さらに面倒なことに、法律の考え方では、特別代理人は「夫の財産は妻にすべて」というような、難しいことがわからない未成年の子にとって不利な遺産分割を認めるべきではありません。少なくとも子の法定相続分、先の相続人2人のケースでは子に遺産の2分の1を渡してくれということになります。
実際に子に不利な遺産分割を認めないのは、特別代理人ではなく裁判所です。特別代理人の選任のおねがいをする際に、遺産分割案を資料として裁判所に出します。この案が納得いくものではないと、裁判所は特別代理人を選ぶ審判を出してくれません。子に不利な遺産分割案を認めてもらいたい場合は、裁判所を納得させる理由を提出しなくてはいけないのです。
「えー、相続人が未成年だとどうしても特別代理人を使わなきゃいけないの?何か抜け道はないの?」
抜け道ではないのですが、裁判所にお世話にならなくてすむ唯一の方法が遺言書を書くことなのです。例えば、「妻にすべての財産を相続させる」と残しておけば、未成年の子がいても裁判所のお世話にならずで手続きができるのです。
共働き家庭が増えるにつれ、お財布は別、配偶者の銀行の暗証番号なんて知らないという夫婦も増えているかと思います。未成年のお子様がいらっしゃる家庭は、お金の話になったときこの話をしてみてくださいね。
また経営者の方は自社株式も亡くなったらもちろん遺産であり、上記のような手続きの対象です。どうぞお気をつけくださいね。
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