不動産の生前贈与は相談のみに終わり、依頼にはつながらない。(税理士・他士業紹介除く)
これは、司法書士あるあるです。
なぜかというと、「不動産の生前贈与はとにかく贈与税が高い」から。
例えば路線価で2000万円の土地を、親が成人した子に生前贈与すると585万円の贈与税が発生します。 贈与税だけではなく、不動産取得税も発生、登記申請時の登録免許税も相続より贈与は税率が高いのです。
一方、2000万の土地を相続する場合であれば、他にめぼしい財産がなければ、控除額内となりますので相続税はかかりません。不動産取得税もなく、登録免許税の税率も低い。
「不動産の承継は、日本では贈与よりも相続のほうが税金がかからない仕組み」このこと説明すると、8割~9割のお客様があきらめます。
あきらめない1~2割の人というのは、不動産の価格が安いか、夫婦間でおしどり贈与が利用できる場合か、贈与税を払ってでも贈与したい特別な事情がある人です。
相続時精算課税制度というのもありますが、これは税金を払わなくて済む仕組みではなく、今は(2,500万円までは)贈与税払わなくてよいけれど、後で相続税で払ってねという、税金を後で支払う仕組み。一方的に得な制度ではありません。
昨今、主にシニア向け週刊誌で「贈与」「改正」「相続」の文字が躍っています。
直近の改正が検討されているのは、年に110万円までなら贈与税は払わなくていいよという暦年贈与と、教育資金や住宅資金を贈与する場合の特別の控除、つまりはお金の贈与の部分のようです。不公平感のある、富裕層のお金の承継に有利な制度を見直そうという趣旨のようで。
※不動産でも暦年贈与を利用することはできますが、不動産価格が高い場合は現実的ではありません。
「いっぱい現金を贈与できないと困る!」という人は、いったい日本の人口の何%なのかしらん、と町司法書士としては思ってしまうのですが、税理士さんのお客様には少なくないのかもしれません。
さらに、不公平を是正すべく、先ほどの「日本では贈与よりも相続のほうが税金がかからない仕組み」も見直しを検討しているようです。当面先になるのでしょうが、こちらは司法書士的には朗報。
まずは「まとまった現金の贈与はお早めに」「不動産の贈与は(今は)税金が高い」ということ、親御さんなどと相続や贈与の話題になったときはご留意ください。贈与はとにかくは税金周りにご注意です。
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